遺留分とは
相続法の中で、遺留分という制度が設けられています。日常的に見慣れない言葉ですが、遺留分とは、被相続人の一定の近親者が得ることのできる相続財産の一定の割合のことをいいます。「一定の近親者」とは、具体的には被相続人の配偶者・子(その代襲相続人も含みます)・直系尊属らが遺留分を有します(遺留分を有する者のことを「遺留分権利者」といいます)。
そもそもなぜこのような制度が設けられているかというと、それは相続の方法が大きく2種類あるからになります。
一方で、民法は相続人及びその相続割合を定めており(これを「法定相続」といいます)、遺留分の規定は不要であるように思われます。
しかし他方で、法定相続とは別に遺言による相続も民法は認めています。遺言により、被相続人は相続人を指定できるため、法定相続であれば確実に相続財産を承継できる遺留分権利者が相続人から外れることが考えられます。この場合に、遺留分は相続法の規定として、遺言により相続人として指定されなかった遺留分権利者に、遺留分での相続財産を承継する権利を認めています。
また、相続人が死亡する以前に他人に財産を贈与すること(これを「生前贈与」といいます)も考えられます。生前贈与を行なったことで、相続財産がほとんどないとなると、遺留分権利者にとっては妥当でないこともあります。そこで、被相続人が相続開始(被相続人の死亡)時において有した財産の価格のみならず、相続開始前の1年間にした贈与財産の価格を含めた財産価値に基づき遺留分を算定することになります(民法1043条1項)。
遺留分が侵害されたときに、遺留分権利者は遺言により相続を受けた者(受遺者)または生前贈与により贈与を受けたもの(受贈者)に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます(民法1046条1項)。ただし、遺留分侵害額請求権は遺留分権利者が相続の開始及び贈与・遺贈があったことを知った時から1年間行使しない時は、消滅します(同法1048条)。
このように、遺留分は複雑ではありますが、子・配偶者・直系尊属といった遺留分権利者に、一定の相続財産の継承を保護している法制度です。
具体的な遺留分の割合は、誰が遺留分権利者なのか、遺留分権利者は何人いるのかによって異なってくるので、弁護士に相談していただくのが有意義かと思われます。
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