交通事故における逸失利益の計算方法|増額のポイントとは?
交通事故による逸失利益とは、交通事故に遭わなければ、被害者が将来得られたであろう収入のことをいいます。
このページでは、交通事故における逸失利益の計算方法と増額のポイントについて解説します。
逸失利益の計算方法
逸失利益には、死亡逸失利益と後遺障害逸失利益との2種類があります。
死亡逸失利益
死亡逸失利益の計算式は以下の通りです。
基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応する中間利子控除のライプニッツ係数
・基礎収入額
基礎収入とは、死亡逸失利益算定や後遺障害逸失利益算定の基礎となる収入額のことです。
原則として、被害者の事故前年の1年間の実収入を基礎収入とします。
ただし、将来、実収入を上回る収入を得る見込みがあることが証明できれば、その収入を基礎収入として算定することができます。
また、収入のない人については、その性質によっては賃金センサスにより基礎収入を算出することもあります。
※賃金センサスとは、厚生労働省が労働者の賃金の実態を把握するために実施する調査で、性別や学歴などの属性別に労働者の平均賃金を知ることができます。
賃金センサスは、家内労働者のように収入がない場合や、収入が明らかにできないが相当額の収入があると認められる場合の逸失利益の算定に利用できるのです。
・生活費控除率
被害者が死亡した場合、将来の収入は失われますが、生存していれば支払われていたはずの生活費の支払いを免れることにもなります。
したがって、生活費控除率は、被害者が将来生存していた場合の生活費に相当する割合のことを指します。
ただし、年金受給者の場合は、生活費にかかる割合が高いと考えられるため、控除率が通常より高くなる場合があり注意が必要となります。
・就労可能年数
原則として、死亡時から67歳までが就労可能年数とされます。
67歳までの年数が平均余命の2分の1未満になる場合は,平均余命の2分の1を就労可能年数とし、未就労者の場合は死亡時ではなく18歳や大学卒業時からとするのが一般的です。
・ライプニッツ係数
ライプニッツ係数とは、逸失利益を算出する際に中間利息を控除するための数値です。逸失利益は,得られるべきだった収入を金額化するものですので,本来は毎月給料のようにもらえるべきものですが,裁判では基本的に賠償金は一括払いとされます。そうすると,将来順次もらえるべきものが,早くもらえるという利益が発生します。その利益を調整するのがライプニッツ係数の役割です。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益の計算式は以下の通りです。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失年数に対応する中間利息控除ライプニッツ係数
・労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺障害によって被害者の労働能力が低下した割合のことです。
認定された後遺障害によって労働能力がどの程度低下したかは、自賠法施行令別表に記載されています。ただし,個別の事案によっては、自賠法施行令別表に記載されている労働能力喪失率を参考に修正を施すこともあります。
・労働能力喪失期間
労働能力喪失期間とは、後遺障害により被害者の労働能力が低下し、それが労働能力に影響する期間をいいます。
原則として、症状固定日から就労可能年齢とされる67歳までの期間を基準に算出されます。
なお,後遺障害の種類によっては,67歳までの期間を基準にせず,5年や10年で区切られることもあります。
逸失利益増額のポイント
逸失利益増額のポイントは、「弁護士の算定基準を用いること」、「正しい後遺障害認定を受けること」、「正しい計算式を用いること」です。
・弁護士基準で計算すること
逸失利益の算定は、「自賠責基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」のいずれかに基づいて行う必要があります。
3つの基準のうち、「弁護士基準」で逸失利益を計算すると逸失利益の額が最も高くなるため、弁護士基準で計算することが逸失利益の額を増やす最も重要なポイントになります。
・正しい後遺障害認定を受けること
まず、後遺障害が認定されなければ逸失利益額は認定されません。
どの後遺障害等級が認定されるかによって逸失利益額は大きく異なります。
・正しい計算式で逸失利益額を算出すること
基礎収入額が低ければ、逸失利益の金額も低くなります。
また、労働能力喪失期間や就労可能年数が正しくなければ、適切な逸失利益を算定することができません。
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